兼六園を歩いて、ひがし茶屋街で写真を撮って、21世紀美術館でアートに触れる。金沢の定番コースは文句なしに楽しいのですが、2回目の金沢や、人混みが苦手な方にはこんな思いもあるはずです。「有名どころはもう行った」「観光客だらけの場所より、落ち着いて歩ける場所がいい」。
実は金沢は、定番スポットから歩いて10分も離れると、驚くほど静かな「もうひとつの金沢」が現れる街です。地元の個人店を取材して回っている石川まんでいいところ編集部が、観光客があまり流れてこない穴場を18か所選びました。まちなか、少し足を延ばすエリア、冬限定の3グループに分けて紹介します。
料金や営業時間は執筆時点の情報です。おでかけ前に公式サイトで最新情報を確認してください。
まちなかの穴場スポット8選。定番から歩いて行ける

まずは兼六園や茶屋街から徒歩圏内なのに、なぜか観光客が少ない場所からです。定番コースの合間に組み込めます。
主計町茶屋街と「暗がり坂・あかり坂」
ひがし茶屋街の対岸、浅野川沿いにある金沢三茶屋街のひとつです。ひがしの賑わいが嘘のように静かで、川面と千本格子の組み合わせが絵になります。旦那衆が人目を避けて通ったといわれる石段「暗がり坂」と、作家の五木寛之が名付けた「あかり坂」を探しながら歩くのがおすすめです。ひがし茶屋街から徒歩5分ほどで別世界に入れます。
卯辰山山麓寺院群「心の道」
ひがし茶屋街の背後の山麓に、約50の寺社が集まる国の重要伝統的建造物群保存地区があります。加賀藩が金沢城の鬼門を護るために配したエリアで、芭蕉の句碑や文人の墓碑が点在する散策路「心の道」が整備されています。高台の宝泉寺まで上がると市街が一望できます。じっくり歩いて2時間ほどのコースです。
泉鏡花記念館
主計町の暗がり坂を上がってすぐ、幻想文学の文豪・泉鏡花の生家跡に建つ記念館です。観覧料は一般310円、高校生以下は無料。主計町とセットで回ると、明治の金沢の空気ごと味わえる文学散歩になります。休館日が月曜ではなく火曜なので、月曜に回る場所を探しているときにも助かる存在です。
鈴木大拙館
兼六園から徒歩圏内にありながら、静けさで金沢屈指のスポットです。金沢出身の仏教哲学者・鈴木大拙の記念館で、建築家・谷口吉生による「水鏡の庭」は、水面を眺めているだけで頭が整理されていくような空間です。入館は一般310円。混雑した定番コースの途中に挟むと、いい休符になります。
新竪町商店街
21世紀美術館から歩いてすぐなのに、観光客がほとんど流れてこないレトロ商店街です。古道具店やギャラリー、個性派カフェ、明治創業の精肉店などが混ざり合っていて、店先を眺めながら歩くだけでも楽しめます。美術館帰りの散歩コースとして地元の人に愛されています。
にし茶屋街と寺町寺院群
金沢三茶屋街で最も静かなのが、犀川を渡った先のにし茶屋街です。大正建築の西検番事務所(国登録有形文化財)が目印で、ゆったり写真を撮りたい方にはひがしよりこちらを推します。隣の寺町台地には約70の寺院が並ぶ寺町寺院群が広がり、願掛け寺として知られる香林寺など、静かな時間が流れています。
妙立寺(忍者寺)
にし茶屋街の近くにある、仕掛けだらけの寺です。落とし穴や隠し階段が張り巡らされた、砦のような構造から「忍者寺」と呼ばれています。拝観は大人1,200円でガイド付き、電話のみの予約制です。当日枠を期待するより、旅程が決まったら早めに電話するのが確実です。
犀川の河川敷と「W坂」
室生犀星が「美しき川は流れたり」と詠んだ犀川沿いは、地元の人の散歩道です。桜橋のあたりから寺町台地へ上がる「W坂」は、W字に折れ曲がる石段の坂で、上り切ると犀川と市街が見渡せます。観光地というより「金沢の日常」を歩きたい方向けの、お金のかからない贅沢なコースです。
少し足を延ばして行きたい穴場8選

バスや車で15〜45分。中心部の混雑と無縁の、地元の人が普段使いしている場所です。
卯辰山公園(見晴らし台・眺望の丘)
金沢駅から車で15分ほど、市街地の東側にそびえる卯辰山は、金沢の街を一望できる無料の展望スポットです。「見晴らし台」からは金沢城公園から金沢駅方面までのパノラマが広がり、「眺望の丘」からは東山の町並み越しに金沢港まで見渡せます。6月なら約100種20万株の花菖蒲園も見頃を迎えます。夜景の時間帯もおすすめです。
石川県立図書館
2022年に開館した「本の劇場」です。円形の大書架が年輪のように広がる吹き抜けは、図書館というよりひとつの建築作品で、これを目当てに来る観光客が増えています。入館は無料。金沢駅からバスで20分ほどかかりますが、雨の日の行き先としても覚えておいて損はありません。月曜休館です。
大野・金石エリア(醤油蔵の港町)
金沢港の近くにある大野は、日本の醤油五大産地に数えられる醸造の町です。明治44年創業のヤマト醤油味噌が開く「ヤマト糀パーク」では無料の蔵ツアーや発酵食ランチが楽しめて、名物の醤油ソフトクリームも外せません。幕末の天才発明家・大野弁吉の作品に触れられる大野からくり記念館(一般800円、水曜休)とセットでどうぞ。
金沢港クルーズターミナル
全面ガラス張りで日本海を一望できる、2020年開業の施設です。入場無料で、操船シミュレーターのある「まなび体験ルーム」も無料。夜はライトアップされて夜景スポットに変わります。港を見下ろすレストランで海を眺めながら食事もできます。観光ガイドの上位にはまだ出てきにくい、地元度の高いスポットです。
大乗寺丘陵公園
犀川の南、標高差83mの丘陵地から金沢市街と日本海まで見渡せる公園です。4月下旬から5月中旬には約13,000株のツツジが斜面を絨毯のように染め、この時期だけは地元の人で賑わいます。入園無料。花の季節に金沢へ来るなら、兼六園のあとにもう一か所加えてほしい場所です。
湯涌温泉
金沢駅からバスで約45分、「金沢の奥座敷」と呼ばれる開湯1300年余の温泉地です。旅館8軒だけの小さな温泉街には、日帰り入浴できる総湯「白鷺の湯」と無料の足湯があります。金沢市内に泊まりながら、半日だけ温泉街の空気を吸いに行く使い方ができるのは、この距離感ならではです。
内灘海岸とサンセットブリッジ内灘
金沢市街から車で20〜30分、日本海に沈む夕日の名所です。全長344mの斜張橋サンセットブリッジは夜になるとライトアップされ、「恋人の聖地」にも認定されています。道の駅や展望台もあるので、レンタカーの旅なら夕方の1時間をここに充てる価値があります。のと里山海道ドライブの入口でもあります。
太陽が丘のメタセコイア並木
郊外の住宅地に、約1kmにわたってメタセコイアの並木が続く場所があります。紅葉の見頃は例年11月中旬から下旬で、県内でも指折りの人気です。住宅街なので専用駐車場はなく、公共交通での訪問が安心です。「観光地ではない場所にこそ絶景がある」を体現するスポットです。
冬だけの穴場2選

雪の金沢は兼六園の雪吊りが有名ですが、冬にしか見られない風景はほかにもあります。
金沢城公園・玉泉院丸庭園のライトアップ
毎週土曜日の夜、金沢城公園と玉泉院丸庭園がライトアップされているのをご存じでしょうか。玉泉院丸庭園では和楽器の音色に合わせた灯りの演出が7分ごとに繰り返されます。期間限定で大混雑する兼六園のライトアップと違って、こちらは毎週開催で入場無料。冬の澄んだ空気の夜は格別です。
長町武家屋敷跡の「こも掛け」
毎年12月初旬、長町武家屋敷跡の土塀に、雪から塀を守る薦(こも)が掛けられます。藁の薦をまとった土塀の路地は冬の金沢だけの風景で、3月中旬まで見られます。雪が積もった朝に歩けたら、それだけで冬に金沢へ来た甲斐があったと思えるはずです。
半日で回るならこのルート

穴場だけで半日コースを組むなら、こんな流れがおすすめです。
- 午前: 主計町茶屋街(暗がり坂・あかり坂)→ 泉鏡花記念館 → 徒歩で卯辰山山麓寺院群「心の道」へ
- 昼: ひがし茶屋街方面へ下りてランチ(混雑前の11時台が狙い目です)
- 午後: バスか車で石川県立図書館 → 夕方に卯辰山公園で市街を一望
- 車がある日: 大野・金石エリアでヤマト糀パーク → 夕日の時間に内灘海岸
定番と組み合わせるなら、兼六園のあとに鈴木大拙館、21世紀美術館のあとに新竪町商店街、という「隣接ペア」を覚えておくと動きに無駄がありません。
まとめ
金沢の穴場は、遠くの秘境ではなく定番のすぐ裏側にあります。主計町も心の道も新竪町も、有名スポットから歩いて数分の距離です。2回目の金沢はもちろん、初めての旅でも半日だけ「静かな金沢」を混ぜると、この街の印象はぐっと深くなります。
定番スポットの回り方は下のガイドにまとめています。穴場と組み合わせて、自分だけの金沢コースを作ってみてください。
Sightseeing
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