石川県の南部に広がる4つの温泉地——山代・山中・片山津(加賀市)、粟津(小松市)。それぞれに異なる顔を持つこのエリアは、「加賀温泉郷」と総称され、北陸屈指の湯どころとして知られている。一泊することで初めて見えてくる、温泉地の本当の姿がある。
加賀温泉郷とはどこにあるのか

加賀温泉郷は、金沢市から車で約40分、加賀市内に位置する。北陸新幹線・サンダーバードが停車する加賀温泉駅からバスでアクセスでき、交通の便は良い。4つの温泉地はそれぞれ個性が異なるが、日帰りでの湯めぐりも可能なほど近い距離にある。
山代温泉——古くて新しい湯の町
1300年の歴史が宿る湯
山代温泉の歴史は奈良時代にまで遡る。行基が発見したと伝わるこの温泉は、1300年以上の歴史を持ち、北大路魯山人や与謝野晶子といった文人墨客も愛した。泉質はアルカリ性単純温泉で、肌がすべすべになると評判だ。
総湯と古総湯——公衆浴場の文化
山代温泉には「総湯」と「古総湯」という2つの公衆浴場がある。古総湯は明治時代の建築様式を復元したもので、脱衣所でゆっくり服を脱ぎ、湯船につかり、また服を着て帰る——入浴本来の姿を体験できる。地元の人が日常的に通う空間に、旅人が溶け込む感覚がある。
山中温泉——渓谷と漆器の里

山中温泉の魅力は温泉だけではない。大聖寺川が刻む鶴仙渓の渓谷美と、400年の歴史を持つ山中漆器の産地として、2つの顔を持つ。渓谷沿いの遊歩道を歩き、川のせせらぎを聞きながら湯宿へ向かう——そんな旅の動線が、山中温泉の醍醐味だ。
| 温泉地 | 泉質 | 特徴 | おすすめの人 |
|---|---|---|---|
| 山代温泉 | アルカリ性単純温泉 | 歴史ある公衆浴場、にぎわいのある温泉街 | 初めての加賀温泉。賑やかさを楽しみたい |
| 山中温泉 | 単純温泉 | 渓谷の自然美と漆器の産地 | 自然の中でゆっくりしたい |
| 片山津温泉 | 塩化物泉 | 柴山潟に面する絶景ロケーション | 湖の絶景と夕日を楽しみたい |
| 粟津温泉 | 含硫黄ナトリウム塩化物泉 | 日本最古の宿・法師がある | 歴史ある温泉文化を体感したい |
片山津温泉——柴山潟を望む絶景
片山津温泉の最大の特徴は、柴山潟(しばやまがた)という潟湖に面したロケーションだ。湖上に浮かぶ噴水と、白山連峰を背景にした夕景は、石川でも有数の絶景として知られる。温泉につかりながら湖を眺められる旅館も多い。
温泉地の選び方と楽しみ方

- 1泊なら山代か山中がおすすめ——温泉街の散策と湯めぐりをセットで楽しめる
- 2泊以上なら別々の温泉地に分けて宿泊すると、それぞれの個性を味わえる
- 日帰り湯めぐりパスを使えば複数の総湯・公衆浴場を巡れる
- 旅館選びは「温泉の質」「食事の内容」「部屋から見える景色」の3点を重視
加賀の食を楽しむ、旅館の膳
加賀温泉郷の旅館で楽しみたいのが、加賀料理だ。のどぐろの塩焼き、カニの甲羅焼き、治部煮——石川の食文化が凝縮された膳は、旅の記憶として深く残る。
温泉に泊まることの意味

日帰りで温泉を楽しむことはできる。しかし、一泊することで初めて体験できることがある。朝の誰もいない大浴場、宿の主人が語る地元の話、翌朝の静かな温泉街の散歩——それらすべてが、「旅」という体験を豊かにする。
加賀温泉郷には、そういう時間が今も残っている。
