石川は、温泉の国です。北陸最古とされる名湯から、渓谷沿いの風情ある湯の街、湖のほとりの湯、そして海からわき出す能登の温泉まで。ひとつの県のなかに、これほど性格の違う温泉が集まっている土地はそう多くありません。
この記事では、石川の温泉を地元メディア「石川まんでいいところ」の視点でまとめて紹介します。それぞれの湯がどんな個性を持っているのか、どう選んでめぐるといいのか。旅の下調べに使ってもらえるとうれしいです。
石川は「温泉県」― 加賀から能登まで
石川の温泉は、大きく分けて三つのエリアにあります。県南の加賀に集まる「加賀温泉郷」、能登半島の付け根にある「和倉温泉」、そして金沢の奥座敷と呼ばれる「湯涌温泉」。それぞれ湯の質も街の雰囲気も違うので、旅の目的に合わせて選ぶのがおすすめです。まずは加賀温泉郷から見ていきましょう。
加賀温泉郷 ― 個性の違う「加賀四湯」
加賀市を中心に点在する山中・山代・粟津・片山津の四つを、まとめて「加賀温泉郷」または「加賀四湯」と呼びます。どれも歴史の古い名湯ですが、街の表情はそれぞれ大きく異なります。近い距離に集まっているので、二泊三泊で湯めぐりを楽しむ人も少なくありません。
山中温泉 ― 渓谷と、芭蕉が愛した湯
大聖寺川がつくる渓谷「鶴仙渓」に沿って、旅館が並ぶのが山中温泉です。開湯は千三百年ほど前と伝わり、松尾芭蕉も逗留してその湯を句に詠みました。渓谷にかかるこおろぎ橋やあやとりはしを歩き、川のせせらぎを聞きながら湯につかる。自然のなかでゆっくり過ごしたい人に向いた温泉地です。共同浴場の「菊の湯」があり、山中漆器の工房が点在するのも土地柄です。
山代温泉 ― 湯の曲輪と、二つの総湯
山代温泉の特徴は、共同浴場を中心に宿や商店が輪のように取り囲む「湯の曲輪(ゆのがわ)」という街並みです。中心には二つの共同浴場があり、明治時代の総湯を復元した「古総湯」では、昔ながらの入浴のしかたを体験できます。北大路魯山人が滞在したことでも知られ、九谷焼ともゆかりの深い土地。歴史と文化の香りを味わいたい人におすすめです。

粟津温泉 ― 北陸最古とされる名湯
小松市の山あいにある粟津温泉は、奈良時代に開かれたと伝わる、北陸でも最も古い温泉のひとつです。長い歴史を重ねた老舗の宿が今も湯を守り続けていて、静かに逗留してじっくり湯を味わうのに向いた温泉地。派手さよりも、時間の積み重ねが生む落ち着きを楽しむ湯です。
片山津温泉 ― 色を変える湖のほとりで
片山津温泉は、柴山潟という湖のほとりに広がります。湖面は光や天気によって表情を変え、一日のうちでも色合いが移ろうといわれます。総湯は建築家・谷口吉生が手がけたもので、大きな窓の向こうに湖を眺めながら湯につかれるのが魅力。開放感のある現代的な湯浴みを楽しみたい人にぴったりです。
和倉温泉 ― 能登の、海からわき出す湯
能登半島の付け根、七尾湾に面して広がるのが和倉温泉です。開湯はおよそ千二百年前と伝わり、白鷺が傷を癒やしていたことで見つかったという伝説が残ります。最大の特徴は、塩分を含んだ「海の温泉」であること。ナトリウムやカルシウムを含む湯は体をよく温め、湯冷めしにくいといわれます。湾越しの穏やかな景色と、山海の幸を一度に味わえるのが能登の湯の贅沢です。

和倉をはじめ能登は、地震の影響を受けた地域でもあります。訪れて湯につかり、土地のものを食べること自体が応援になります。能登の個人店のめぐり方は能登を旅して応援する。里山の個人店ガイドにまとめているので、あわせてどうぞ。
金沢の奥座敷・湯涌温泉と、そのほかの湯
金沢の中心部から車で三十分ほど、山あいにひっそりとあるのが湯涌温泉です。古くから金沢の奥座敷として親しまれ、画家の竹久夢二が滞在した土地としても知られます。近くには夢二をしのぶ館もあり、湯と文化を一緒に味わえます。観光でにぎわう金沢の街から少し足をのばして、静かな夜を過ごしたいときに向いています。
このほかにも、白山のふもとや能美市の辰口など、石川には知る人ぞ知る湯が点在します。有名どころだけでなく、こうした小さな温泉地を訪ねてみるのも旅の楽しみ方のひとつです。
温泉地の「まんでいい」楽しみ方
- 外湯(共同浴場)でその土地の湯を。加賀四湯にはそれぞれ総湯があり、宿に泊まらなくても土地の湯を気軽に味わえます。湯めぐりの起点にどうぞ。
- 湯上がりは町歩きとカフェで。温泉地の周辺には、個人経営のカフェや喫茶が点在します。石川のカフェの選び方は石川のカフェ・喫茶めぐりガイドを参考にしてください。
- 土地の食と工芸にふれる。山中の漆器、山代の九谷焼など、温泉地は工芸の産地でもあります。食のことは石川のご当地グルメガイドにまとめています。
- 加賀エリアは個人店とあわせて。温泉地の周りには魅力的な一軒がたくさんあります。加賀の個人店めぐりガイドもどうぞ。
日帰りで入るか、泊まって入るか
石川の温泉は総湯や日帰り施設が充実しているので、入るだけなら泊まらなくても成立します。ただ、湯の効きかたが変わるのは二回目からです。夕方に入って、夕食をとって、寝る前にもう一度。朝にも入る。この回数を稼げるのが宿泊のいちばんの利点だと思います。
山代と山中。外湯まで歩ける町と、渓谷沿いの宿。
能登の和倉は、海からわいた湯です。部屋から七尾湾が見える宿が多く、湯と景色がセットになっています。
七尾湾を望む宿。海のそばの湯という組み合わせです。
金沢に用があるけれど温泉にも入りたい、という欲張りな日程なら湯涌温泉。市街から車で30分の奥座敷です。
金沢市内なのに山あい。市街から車で約30分です。
まとめ ― 石川の温泉は「個性」で選ぶ
渓谷の山中、街並みの山代、歴史の粟津、湖畔の片山津。海の和倉に、奥座敷の湯涌。石川の温泉は、どれも「ここにしかない個性」を持っています。湯そのものだけでなく、まわりの町歩きや食、工芸まで含めて味わうと、その土地のよさがぐっと深く感じられます。「石川まんでいいところ」では、温泉地のまわりにある個人店も取材して紹介しています。掲載店の一覧から、湯上がりに立ち寄りたい一軒を探してみてください。
Sightseeing
この記事に出てくる観光スポット
本文で触れた場所です。開いている時間や料金は、それぞれのページにまとめてあります。
