「食の都」と称される金沢。しかしその言葉の意味は、有名なものを食べ歩くことではない。市場から始まり、茶屋街で甘いものをとり、地酒と肴で夜を締めくくる——金沢の食を本当に楽しむためのルートがある。
金沢が「食の都」と呼ばれる理由

江戸時代、加賀百万石の城下町として栄えた金沢には、大名文化に育まれた食の伝統が残る。地理的にも日本海の海の幸、白山山系の清水と山の幸、そして加賀平野の豊かな農産物が集まる好条件の土地だ。
現在も人口あたりの飲食店数が全国トップクラスを誇り、高級料亭から庶民的な大衆食堂まで、食のレイヤーが厚い。
近江町市場からスタートする朝の食べ歩き
朝7時の市場が最高の理由
金沢の食べ歩きは近江町市場の朝から始めるのが正解だ。午前7時頃の市場は地元の料理人や主婦が買い物をする時間帯で、最も鮮度が高く種類も豊富な時間帯でもある。
市場で買って、すぐ食べる
市場内には立ち食いスタイルの店が点在し、焼き牡蠣、のどぐろの干物の炙り、新鮮な刺し身などを買ってその場で食べることができる。朝から海鮮を食べる贅沢が、金沢の日常だ。
- 焼き牡蠣——旬の時期(冬〜春)はとくに旨い
- のどぐろの炙り——脂が乗った白身を焦げ目がつくほど炙る
- 海鮮丼——市場2階の食堂で食べるのが定番
- 加賀棒茶——金沢のほうじ茶。香ばしさが際立つ
ひがし茶屋街の甘味と茶

市場のあとは徒歩圏内のひがし茶屋街へ。ここでは抹茶や加賀棒茶と一緒に和菓子を楽しむ。観光客向けの金箔ソフトより、職人が丁寧に作った上生菓子のほうが、金沢らしい味わいがある。
茶屋街の老舗和菓子屋では、季節ごとに異なる上生菓子が並ぶ。春は桜、夏は涼やかな錦玉羹、秋は栗——季節の移ろいを菓子で感じる文化が、金沢には根付いている。
片町・香林坊エリアのランチ選び
金沢の繁華街・片町と香林坊エリアには、地元民御用達のランチスポットが集まる。観光客向けではなく、地元の人が毎週通う定食屋、ラーメン屋、パスタ屋——そういう店に混じって座ることで、金沢の日常に近づける。
| ジャンル | 特徴 | 価格目安 |
|---|---|---|
| 金沢カレー | ドミグラスベースの濃厚カレー、全国チェーン発祥の地 | 700〜1,000円 |
| 加賀料理の定食 | 日替わり定食で本格加賀料理を手軽に | 1,000〜1,500円 |
| 海鮮丼 | 昼は市場のほか片町周辺にも海鮮丼専門店が多い | 1,500〜2,500円 |
| ラーメン | 鶏ガラ・魚介系のあっさりした金沢スタイル | 700〜1,000円 |
金沢おでん——地元民の冬の定番

金沢にはおでん文化が根付いており、「金沢おでん」は地元グルメとして全国的な知名度を持つ。車麩・バイ貝・加賀野菜・がんもどきなど、金沢ならではの具材が特徴で、昆布だしが効いた上品な出汁が絶品だ。
金沢おでんが食べられる店は、居酒屋から専門店まで多岐にわたる。夜より昼に提供する老舗も多く、ランチタイムにも楽しめる。
夜の金沢——居酒屋と地酒の世界
片町の夜は地酒から
夜の片町・香林坊エリアには、石川の地酒を豊富に揃える居酒屋が集まる。菊姫・天狗舞・手取川・宗玄——銘柄ごとに異なる味わいを、旬の肴と一緒に楽しむ。初心者は「今日のおすすめを一杯だけ」と頼むと、その日の一番を出してもらえる。
〆の金沢らしい一杯
夜の締めには、金沢独自のB級グルメ「ハントンライス」を試したい。ケチャップライスにフライとタルタルソースをかけた名物料理で、地元では定番の〆めし。深夜まで営業する老舗店では、夜の金沢を生き抜く人たちが肩を並べている。
食べ歩きを楽しむための心得

金沢の食を本当に楽しむために、いくつかのことを心がけてほしい。有名店に並ぶより、地元の人が並んでいる店に入る。メニューに迷ったら「おすすめを」と聞く。量より質で、一日に食べる場所を絞る——そういう旅の仕方が、金沢の食文化を深く味わうことにつながる。
- 朝は市場、昼は定食、夜は居酒屋——時間帯ごとに場所を変える
- 地元の人が多い店を選ぶ(行列より、満席の常連客が目安)
- 季節の旬食材を意識する——金沢の食は季節で大きく変わる
- 一軒で完結せず、はしご酒・はしご食べが金沢流
