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十二ヶ滝

Feature 01 / 小松の山あいを一日で石川まんでいいところ 特集

十二ヶ滝

なぜ、十二筋なのか

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滝というと、崖の上から一本、落ちてくる姿を思い浮かべる。だが小松市の東、国道416号を山側に走って着く「十二ヶ滝」は、その想像を裏切る。落ちているのは幅36メートル、落差4メートルの一枚岩の上をなでるように広がった水で、それが縁のところで十二の筋に分かれて落ちる。滝というより「川そのものが段になっている」と言ったほうが近い。

十二の筋 ── 案内板の数字を図にすると

← 幅 二十間(約36m)→落差4m河床はすべて岩石(案内板より)
  • 36m滝の幅
  • 4m落差
  • 12水の筋
  • 明治37年神社の合祀

9月7日、雨上がりの夕方に立ち寄った。ここは今回まわった小松の山あい3か所(十二ヶ滝、苔の里、西山石切り場跡)の最初の一つで、いちばん市街地に近い。この記事では、滝の名前の由来から河床の岩、いまは無い神社の話、そして次の目的地までの移動まで、現地の案内板で読めたことと見えたことを順に書いていく。

滝の全景。手前の看板は「滝つぼの周りは深くなっているので近づかない」。夕方の雨上がりで水は多めだった
滝の全景。手前の看板は「滝つぼの周りは深くなっているので近づかない」。夕方の雨上がりで水は多めだった
01

寄り道パーキングに車を停める

十二ヶ滝は、国道416号沿いの「寄り道パーキング 布橋十二ヶ滝」の目の前にある。駐車場から滝までは歩いて1分もかからない。小松市の公式では普通車15台、大型バス1台、障害者等用1台。入場料は無い。

駐車場の柵に、まず目に入るのが「危険 泳いだらダメ!! 遊泳禁止!」の看板だ。石川県南加賀土木総合事務所と小松市の連名で、英語・中国語・韓国語・ポルトガル語が並ぶ。滝の手前の芝地にはロープが張られ、ピンクの目印が等間隔に付いていた。「滝つぼは『おぼれやすい』」「滝つぼの周りは深くなっているので近づかない」という看板が2枚、川に向けて立っている。こまつ観光ナビにも「滝周辺の立ち入りを制限するため柵が設置されています」とある。

駐車場の柵に付いた遊泳禁止の看板。4か国語で書いてある
駐車場の柵に付いた遊泳禁止の看板。4か国語で書いてある

駐車場は広く、停める場所に困ることはない。ただ、この日は雨上がりで水が多く、河床の岩の縁まで水が来ていた。増水しているときは岩盤に近づけないし、そもそも滝つぼ周辺はロープの内側に入れない。晴れが続いた日に来れば水は減って、十二の筋がはっきり分かれて見えるはずで、その日にもう一度来て確かめたい。

滝の手前はロープと柵で区切られている。ここから先には入らない
滝の手前はロープと柵で区切られている。ここから先には入らない

つまりこの滝は、近づいて眺める場所であって、水に入る場所ではない。それを最初に書いておく。滝の縁は岩盤が水で磨かれていて、見た目より滑りやすい。

02

名前の由来

駐車場の脇に「西尾八景 四季の移ろい 十二ヶ滝」と題した案内板がある。小松市と西尾元気の里推進協議会が立てたもので、由来がこう書いてある。

沢町・布橋町の下方、金平町境の川筋にあり、この付近の河床はすべて岩石です。郷谷川はこの滝で十二筋に分れて落下しているので十二ヶ滝の名が付けられました。

数えてみた。この日の水量では、はっきり筋になって落ちているのが左から6本ほど、岩の上を薄く広がって落ちている部分を入れると10本前後。「十二」は水量で増えたり減ったりする数で、雪解けの4月から6月がいちばん筋が多く見えるのだと思う(案内板もその時期を「もっとも見ごろ」としている)。

「西尾八景」の案内板。由来、こいの滝登り、布橋みずばしょう自生地の3つが書かれている
「西尾八景」の案内板。由来、こいの滝登り、布橋みずばしょう自生地の3つが書かれている

案内板にはもう一つ、興味深い数字がある。「幅は二十間(約36m)、昔は滝の高さが二十尺(約6m)に及んだと言います」。いまの落差は4メートル。江戸期の単位で語られた「高さ二十尺」が本当なら、滝は2メートルほど低くなったことになる。河床の岩が削られたのか、下流の川底が上がったのか、案内板は理由を書いていない。ここは分からないまま残しておく。

03

河床は一枚の岩

滝の上に立つと、足元の岩が赤茶色をしているのが分かる。表面は水で磨かれて丸く、ところどころに深い筋が入っている。この筋に沿って水が集まり、縁で束になって落ちる。十二筋の正体はこの岩盤の溝だ。

滝の上流側。赤茶色の岩盤に溝が走り、その溝ごとに水が集まる
滝の上流側。赤茶色の岩盤に溝が走り、その溝ごとに水が集まる
右岸の脇を流れる細い筋。用水路のようなコンクリートの水路も並走している
右岸の脇を流れる細い筋。用水路のようなコンクリートの水路も並走している

案内板が「この付近の河床はすべて岩石」と書くとおり、滝の上流も下流も、川底に砂利が溜まる場所がほとんど無い。岩の種類までは案内板に無い。小松の山あいは滝ヶ原石(緑色凝灰岩)で知られるが、この滝の岩がそれと同じかどうかは、この記事では断定しない。色は滝ヶ原石の青白さとは違い、赤茶に見えた。

滝の脇には「四季の移ろい 十二ヶ滝 布橋町」と刻まれた石の標柱もあった。苔と地衣類で表面がまだらになっていて、これがいつ立てられたかは読み取れなかった。

滝の脇に立つ標柱。「西尾八景 四季の移ろい 十二ヶ滝」
滝の脇に立つ標柱。「西尾八景 四季の移ろい 十二ヶ滝」
04

滝の上にあった神社と、大杉のこと

案内板の後半に、いまは無いものの話が出てくる。

この滝の上手に三つの祠があり八幡、観音、不動とそれぞれを祀り、十二ヶ滝神社と言っていましたが、明治三十七年に沢町の春日神社に合祀されました。祠の傍らに周囲二丈(約6.6m)余り、高さ十七・八間(約30〜32m)の大杉が神木としてありましたが今は残っていません。

滝の脇から山側へ入ると、杉林の中に「白山権現」と書かれた白い看板が立っていた。看板の先に石段があり、その上は林になっている。案内板にある「三つの祠」との関係は書かれていないので、ここも分からないままにしておく。ただ、滝の真上に神を祀る場所があった、という話は、この地形を見ると納得がいく。川がまるごと段になって落ちる場所は、昔の人にも特別に見えたはずだ。

杉林の入口に立つ「白山権現」の看板。石段が林の中へ続く
杉林の入口に立つ「白山権現」の看板。石段が林の中へ続く
見上げると杉。案内板の「高さ30mの大杉」は残っていないが、林はいまも高い
見上げると杉。案内板の「高さ30mの大杉」は残っていないが、林はいまも高い
05

こいのぼりの季節と、みずばしょう

十二ヶ滝がいちばん写真に撮られるのは、5月だ。案内板にはこう書いてある。

この時期は、滝の上で泳ぐ「こいのぼり」達により、その美しさは一層引き立ちます。地元、市内、県内の方々から寄贈された「こいのぼり」です。川幅いっぱいに元気に泳ぎ、あたかも「こいの滝登り」の風情をかもしだしています。

ロープを張るための支柱が、9月のいまも滝の上に残っていた。こいのぼりの写真は案内板の隅に小さく載っているだけなので、実物は来年5月に見に来る。

もう一つ、案内板の左側に「布橋みずばしょう自生地」の項がある。小松市指定文化財で、みずばしょうは本来「中部以北の山地湿原に群生する」植物だが、布橋では「標高50mの低地に群生しているのが珍しく」、昭和44年に指定された。場所は「国道416号から約200m入った湿地帯」、花は4月上旬から中旬。滝の案内板の地図に「自生地」の矢印があるので、春に来るなら滝と一緒に見られる。

もう1枚の案内板「布橋十二ヶ滝」。西尾地区の8つの見どころが地図で示されている
もう1枚の案内板「布橋十二ヶ滝」。西尾地区の8つの見どころが地図で示されている

この2枚目の案内板には「西尾地区について」もあり、かつては尾小屋鉱山が栄え、いまは資料館として整備されていること、地区内に象岩・観音山・烏帽子岩・鱒留の滝・西俣キャンプ場・大倉岳高原スキー場が点在することが載っている。十二ヶ滝はその入口にあたる。

06

「西尾八景」の残り7つ

2枚目の案内板は、十二ヶ滝を「西尾八景」の①として、郷谷川の上流に点在する見どころを8つ並べている。案内板の説明をそのまま書き写しておく。滝だけ見て帰るのはもったいない、と案内板が言っている。

# 名前 案内板の説明
布橋のミズバショウ自生地 標高50mの低地に群生していて珍しい。駐車場から群生地までが近く、手軽に鑑賞できる。市指定文化財
象岩 光谷川に架かる橋の下。土砂や岩、大木の流されるような大洪水にも流されずに残り、形が象によく似ている
観音山 参道に33躰の観音菩薩の石像。山頂にお堂があり、広場から西尾が一望、日本海の水平線が眺められる
烏帽子岩 西俣川の下流、岩上神社の上にある神岩の大岩。形が烏帽子に似ている
鱒留の滝 昔、鱒が川を遡上してきても、この滝のためこれ以上上流に登れなかったことからの名。落差10m余り、幅20m
西俣キャンプ場 蓮如山と鷹落山を望む山間。テントのキャンプ場、車を乗り入れられるオートキャンプ場、日帰りのデイキャンプ場を併設
尾小屋鉱山資料館 尾小屋鉱山は天和2年に採掘されていた記録があり、明治10年代の本格的な採掘以降、約80年間にわたり日本有数の鉱山として繁栄。かつての坑道を利用したマインロードで採掘状況を再現
大倉岳高原スキー場 ファミリーで楽しめるコース設定。日帰り登山にも適した山で、途中にミズバショウ群生地。毎年秋にコスモスまつり

この中で十二ヶ滝と同じ「滝」は⑤鱒留の滝だけで、落差10m・幅20m。十二ヶ滝は落差4m・幅36m。片方は高く、片方は広い。郷谷川の上流と下流で、同じ川の滝がまるで違う形をしているのは、河床の岩の出方が違うからだろう。次に来るときは、この2つを見比べるつもりでいる。

07

移動のメモ

今回は小松の山あいを3か所つないだ。十二ヶ滝が最初で、次が日用町の苔の里、最後が滝ヶ原町の西山石切り場跡。距離と時間は次のとおり(距離と所要は道路データから算出した目安、実測は写真の撮影時刻から逆算した)。

  1. 小松IC十二ヶ滝
    約7km距離
    約10分目安
    この日の実測
  2. 小松駅十二ヶ滝
    約10km距離
    約20分(公式)目安
    この日の実測
  3. 十二ヶ滝苔の里
    約9km距離
    約10分目安
    約11分この日の実測
  4. 苔の里西山石切り場跡
    約8km距離
    約10分目安
    約13分この日の実測
  5. 西山石切り場跡那谷寺
    約3km距離
    約10分目安
    この日の実測
  6. 西山石切り場跡粟津温泉
    約5km距離
    約10分目安
    この日の実測

3か所を合わせて走った距離は約25km、滝の滞在が10分、苔の里が25分、石切り場が15分。2時間あれば余裕で回れる。ただし十二ヶ滝から先は道が細くなる。苔の里までは国道416号から県道に入って集落を抜ける道、石切り場の周辺は車1台分の幅しかない区間があり、対向車が来たら待避所まで戻ることになる。写真の時刻で見ると、目安より2〜3分ずつ余計にかかっているのはそのためだ。

滝の滞在は短くていい。駐車場から見て、上流側に回って岩盤を見て、案内板を読んで10分。雨上がりなら岩の上は歩かないほうがいい。

08

行くなら

  • 場所石川県小松市布橋町・沢町(国道416号沿い「寄り道パーキング 布橋十二ヶ滝」)
  • 駐車場普通車15台・大型バス1台・障害者等用1台、無料
  • 料金無料
  • 見ごろ雪解けで増水する4月から6月。5月はこいのぼり。4月上旬から中旬は近くの布橋みずばしょう自生地も
  • 注意遊泳禁止。滝つぼ周辺はロープの内側に入らない
  • 雨の日増水すると岩盤には近づけない。雨上がりは水量が多く、晴れが続いた日のほうが筋がよく見える(取材時の所感)
  • 問い合わせ小松市観光案内所 0761-21-8208(9:00〜18:00)

出典:現地の案内板「西尾八景 四季の移ろい 十二ヶ滝」「布橋十二ヶ滝」(小松市・西尾元気の里推進協議会)、こまつ観光ナビ「十二ヶ滝」。落差・幅は案内板の記載による。距離は道路データからの算出値で、目安として読んでください。

取材日:2026年9月7日

SERIES / 小松の山あいを一日で

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