「いしる」は、能登半島に古くから伝わる魚醤(ぎょしょう)です。魚介の内臓などを塩とともに長い時間かけて熟成させた発酵調味料で、少し加えるだけで料理に深いうまみと奥行きが生まれます。秋田のしょっつる、香川のいかなご醤油と並ぶ「日本三大魚醤」のひとつでもあり、能登の食文化を語るうえで欠かせない存在です。

この記事では、いしるとは何かを、原料や作り方、名前の違い、そして使い方まで順番に解説します。地元の個人店を取材している「石川まんでいいところ」の視点で、能登の里海が育てたこの調味料の魅力をまとめました。

いしるとは?能登に伝わる魚醤

いしるを使った能登の貝焼き・鍋料理
いしるを使った能登の郷土料理。魚醤のうまみが料理に奥行きを生む(写真提供:石川県観光連盟/ほっと石川旅ねっと)

いしるは、能登半島の先端部、奥能登に古くから伝わる魚醤です。魚介類を塩とともに長期間熟成させると、うまみ成分であるアミノ酸がたっぷりと生まれます。この凝縮したうまみが、いしるの持ち味です。秋田のしょっつる、香川のいかなご醤油と並んで、日本三大魚醤に数えられています。

「いしる」と「いしり」― 原料の違い

能登では、地域によって「いしる」「いしり」と呼び方や原料が少しずつ異なります。日本海に面した外浦の地区では、イワシやサバを主な原料とし、これを「いしる」と呼ぶことが多いです。いっぽう富山湾に面した内浦の地区では、イカの内臓(ゴロ)を原料にしたものを「いしり」と呼びます。同じ能登でも、海と魚の違いが、そのまま味わいの違いになっています。

作り方も原料によって変わります。イワシを使うものは、魚を丸ごと塩に漬け、およそ半年から一年かけて熟成させます。イカの内臓を使うものは脂肪分が多いため、塩を少なめにして約二年もの時間をかけてじっくり寝かせます。時間をかけて発酵させることで、あの独特の深い風味が生まれるのです。

いしるの使い方

いしるは、少量でも料理をぐっと引き立てる万能調味料です。能登の郷土料理として有名なのが「貝焼き」で、大きな貝殻を器にして、いしると具材を煮ながら味わいます。ほかにも、鍋物や煮物にひとさじ加えれば、うまみと奥行きが増します。刺身や浅漬けのつけ醤油として使ったり、水で薄めてきゅうりや大根を漬ける「いしり漬け」にしたりと、使い方はさまざまです。

独特の香りがあるため最初は驚くかもしれませんが、火を通すと角がとれ、まろやかなうまみに変わります。家庭でも使いやすい小瓶で売られているので、能登のお土産にもおすすめです。いつもの料理に少し加えるだけで、能登の味を食卓に呼び込めます。

まとめ ― いしるは能登の発酵の知恵

いしるは、魚介を塩とともに長期間熟成させた能登の魚醤で、日本三大魚醤のひとつに数えられます。外浦のイワシ・サバ、内浦のイカと、地域によって原料や呼び名が変わり、貝焼きや鍋、いしり漬けなど幅広く使われてきました。雪深い冬を越すために発酵の知恵を磨いてきた、能登ならではの調味料です。

能登を訪れたら、ぜひいしるを使った郷土料理を味わってみてください。いしる以外の石川の名物もまとめて知りたい方は、下の記事もあわせてどうぞ。地元の人が通う小さな名店を探すなら、掲載店の一覧ものぞいてみてください。